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            宇宙は本の箱

     宇宙は本の箱

ある饗宴

人生わずか五十年 も過ぎて、凛と澄み切った空の下で始まったことも過ぎようとしていた頃・・・

 五十年も生きればもう十分だ。

 また 詩を書けばいいじゃないですか?
 この間のあれは若い頃書いていた詩でしょ?いい詩 書いていたんですよね。

 詩は全然書けなくなったし、もう書きたいとも思わないんだ。

 なぜですか?皆、また 若い頃に帰るっていうじゃないですか。

鍬を持つ手をしばし休めながら、土手に咲く花を眺めるともなく眺めながら、もうずっと舞台から降りたがっていた若者は言った。

思い返してみれば、その饗宴にいつもジロはいなかった。他の饗宴にはいた。
彼は若かったし、若いがゆえにそれでよしとしたのは私だ。


十代の頃はノートとペンと机と・・・
ああ それだけあれば まだ生きていける と思った。
二十歳を過ぎては詩は書くまいと思った。それは逃避、それは甘え。
詩は人生の上に書くものだと思った。
人生五十、もう十分すぎるほど生きた者は鍬で未来に文字を書くのさ。



 おお それでも 人生を書きつくせるなんて そんな馬鹿な!

 水に書かれた物語。

君が似非ソクラテスだとて流れゆく果てにそれを知る者はいなかった。
私は詩は書かずに、相も変わらず生きている。





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